彫刻箇所
墓石に彫る文字や位置に、決まりはありません。どの位置にどのような文字を入れても自由です。
自由といっても、多くの人が「しっくりなじむ」と考える標準的な傾向はあります。
①竿石
竿石には〇〇家之墓や、〇〇家又は各宗派のお題目を彫刻されることが多いのですが、横型の洋型墓石ではわりとお好きな言葉を彫刻する場合が多いようです。
裏には建立者名を彫刻し、側面には故人の戒名彫刻などを彫る場合もあります。
②上台
この上台部に家紋を入れる方や家名(〇〇家)を入れる場合があります。
③中台
通常こちらの中台には彫刻はしません。
④芝台
こちらも彫刻することはありません。
⑤拝石
こちらも彫刻することはありません。
⑥水鉢
この水鉢に花彫刻や家紋彫刻をする場合もあります。
⑦花立
花立には花彫刻や家紋彫刻をする場合があります。
⑧香炉
香炉の側面に〇〇家と名入れする場合があります。
⑨墓誌
墓誌はお墓に納骨されている方のお名前、戒名、没年月日、没年などを彫刻するための石板の事。
・墓石名称
・彫刻箇所施工例
墓石文字の色
墓石は彫ったばかりの新品状態では石の種類によってはよく見えない場合もあります。
そのような時は彫った場所にペイントを入れると良く見えるようになります。
文字の色に関しては絶対こうでなくてはダメというものではなく、地域によって大きく違っております。
墓石文字の彫り方
墓石文字彫刻の場合彫り方によりその印象も変わります。
墓石の形、彫る文字に合わせた彫り方を選ぶ事が大事です。
墓石文字彫刻は技術の進歩によりその方法も時代と共に変わってきています。
昔々の石屋さんはノミを使って墓石に文字を彫っていましたが、現在ではほとんどの場合吹き付け彫刻と呼ばれるサンドブラストを使った彫刻が一般的です。
サンドブラストでは彫刻方法に応用が利く為、派生した彫刻方法が色々あります。
そして近年では写真を精巧に転写できたり、様々な方法があります。
(手彫り)
昔ながらの工法で、さすがに現代ではノミとトンカチではなく、コンプレッサーにつながれた電動工具の先端が振動することで彫るものです。
手作業ならではの繊細で味のある工法ですが、なにぶん時間がかかりすぎる為手彫り彫刻を現在でも行っている石材店はごくわずかと言えます。
(吹き付け彫刻)
吹き付け彫刻は現在の墓石文字彫刻においては大部分で行われている工法です。彫刻する場所のゴムをカットしそこに硬度な砂を吹き付け彫刻していく工法です。
手彫り彫刻よりはるかに加工時間の短縮が図られ、採算面でも有利なこともあり、ほとんどの彫刻がこの吹き付け彫刻となっています。
(線彫り)
吹き付け塗装の一種で線状にカットしたゴムに吹き付けて模様を彫る工法です。
主に花の模様などの単純なデザインなどにとりいれられています。
(浮彫)
家紋彫刻はほとんどがこの浮彫となります。
文字通り文字や図案が浮き出るように見えるように、周りの部分を彫ります。
(ブラスト彫刻)
墓石を彫るのではなく、どちらかと言えば石材表面の艶を消すことで、磨き部分とのコントラストにより文字や図案が浮き出るものです。
コントラストが大事になるので、黒御影石などの墓石に特に有効な工法となります。
(立体彫り)
主にバラやユリなどの花の彫刻で使われるもので、ブラスト彫刻に奥行きを持たせ、立体感を出す手法が立体彫りで、よりリアルに表現したいときには効果的な手法となります。
墓石文字掃除
墓石の文字は墓石の中でも一番汚れが溜まる場所となります。
しかし深く掘られた文字の奥は中々キレイにすることが出来ません。
ご自分でキレイに出来ない場合には墓石専門のクリーニング業者に頼まれるのが一番です。
墓石文字書体
墓石文字では通常書体を選ぶ事が出来ます。
代表的なものとして「楷書」「行書」「隷書」「草書」「ゴシック」などを選ぶ事ができます。
墓石に彫られる彫刻の書体には色々な書体があります。
これでなくてはダメです。というものではありませんので、基本的にはご自分の好きな書体を選ぶことになります。
楷書、行書、隷書、草書、ゴシック、明朝体、そしてご自分で書いた文字を彫るなどがありますので墓石建立の際はよく考えて決める必要があります。
(楷書)
我々が幼い時から学んできた基本的で整然とした文字のことで、墓石文字としては一番わかりやすい文字になります。
一画一画が直線的になりますので、少々堅苦しく感じる場合もあります。
(行書)
楷書と違い、書きやすさと筆使いを重視した書体で曲線的になりますので、柔らかい印象を与えます。
一画一画が直線で構成されている田中さんや山田さんなどの場合行書の方がやさしいさを感じます。
(隷書)
篆書を省略して簡便にしたものであり楷書の元になった文字で、右払いに見られる独特の払いから右へ重みのかかったバランスが特長的です。
(草書)
草書は早く書くことを目的の字体になり、字画が大きく省略されるのが特徴となります。
そして草書は書家によって字体が変わるので注意が必要です。
墓石文字補修
墓石文字の補修にはペンキ剥がれに対する補修の意味と、彫刻文字を変えるなどの文字修復の意味があります。
ペンキ剥がれに対する補修のやり方と文字修復のための補修のことはこちらから
墓石文字の消去
お墓も年月が経ちますとそれぞれのご家庭においても時間と共に事情が変わってくる場合もあります。
昔は仲睦ましかった二人がそれぞれ別の人生をやり直す、いわゆる離婚をしたが墓石には別れた奥さんの文字が・・・。
墓石正面文字を〇〇家としたが、子供がいない為甥っ子に承継するので正面文字を消して別の名前にしたい。
親の代で遠い親戚の遺骨を我が家のお墓に納骨してあげたが、事情がありその方に出て行ってもらったから字を消したい。
などの理由から近年文字を消したいと相談される方が増えています。
しかしながら墓石文字を消すことはできません。
紙に書いた文字でしたら消しゴムで消すことはできますが、墓石に彫った文字を消すことは当たり前ですが不可能です。
では上記のような要望にはどう対応するのでしょうか?
(文字を埋める)
文字を消すことはできませんが、埋めることはできます。しかし所詮は応急処置ですので年月とともに埋めた場所がわかってしまいます。
(削る)
埋めるのではなく、一面を全て削ってしまう方法です。削り直した後、磨き入れすればキレイさっぱり文字は消えますが、これも以下の問題が出ます。
正面文字を消す場合約1寸位削らないとならないので、真上から見ると形がいびつになってしまう。
削って磨き入れした面はやたらきれいになるが、その他の面は色あせている為面によって差が出る。
以上のデメリットをよく考慮の上で行う必要があります。
・彫刻イメージ例(CG)